セカンドキャリア

2017.07.9

全日本社会人チャンピオンの杉田選手がプロに転向。

杉田選手は大森会長に縁があり、中学生のころから大森ジムで勉強とボクシングをはじめ、駿台、東京農大のボクシング部で活躍、現在は警視庁に勤務しながら全日本社会人選手権で優勝、屈指のアマチュアボクサーだ。東京農大時代は関東リーグ戦を大森会長と杉田選手の応援に行き、一部リーグの決勝争いをする試合のレベルの高さに驚いた。全日本チャンピオン、ランカーがしのぎを削る屈指の好試合の連続で、農大の優勝争いの年は杉田選手は連戦連勝だったと記憶している。社会人では機動隊という激務の合間に練習を続け、プロジムで内山選手、井上選手といった世界チャンピオンクラスとのスパーリングをこなし、まだまだその強さは進化の過程にある。

試合会場で時折顔をあわせることがあったが、プロに転向するということで、わざわざ大森会長に挨拶に出向いて来てくれた。地道な練習を弛まず続けるところとこういう義理堅いところも併せ持つ好青年だ。プロになると言っても、警視庁警察官の仕事はそのままで、プロボクサーを両立させるとのことで、彼は警視庁でボクシング部を創設し、後進の指導にあたるのが夢と語っていた。一方で見方を変えれば、警察官という厳格な職業にプロボクサーと言う興行の要素を含んだ副業が認められるのかと異論もあると思うが、今回は警察庁が公認の特例だそうだ。杉田選手の実力と実績が道を切り拓いた結果だろう。

私自身、朝から晩まで自動車会社のマーケティングでデスクワークから現場まで飛び回り、一方でジムの経営をしていて感じるのは、まっとうなフルタイムの仕事に加えて、もうひとつ本格的な仕事を持つというのはホントにしんどい…なんぼ好きな仕事はいえ、結果として仕事以外の余暇、趣味、休養の時間を削り取ることになり、家族の協力なくしては成り立たない。ところが、杉田選手の場合は、本業が警察官という社会的責任も重く、しかも現在の所属は機動隊という激務の職業である。ボクシングの練習を続けるだけでも大変だと思うが、さらにプロボクサーとしての道も開拓したいという。

プロとはランセンスのありなしでは無い。ボクシングに限らず、自動車やオートバイのレースから役者、演劇、芸術の世界まで、プロを自称する人はゴマンといるが、その世界で生活していける人は少ない。プロとはその世界で生きていく矜持を持ち、実力を評価され、そこで自身のポジションを確立し、生活の糧を得られる技能を持つことだと思う。(これは社会人であっても変わらないのではないか。会社員であっても組織を離れた瞬間になにもできないようではプロでは無い)杉田選手の場合は、現職が公務員なので収入を得るのは難しいと思うが、目指すものはプロのリングで成功する事だろう。大森会長のもとで縁があった素晴らしい選手にエールを送りたい。