「食は私の命そのもの」

2016.11.3

「食は私の命そのもの」

とは、食のエッセイスト・平松洋子さんのインタビュー集「食べる私」(文芸春秋)
のなかのマラソン金メダリスト・高橋尚子さんの言葉である。

ボルダーの合宿では、毎食ボウル一杯のひじき、3~4切れのレバー、納豆は朝晩2
パック。

なおかつ体重を数キロ落とす指示が出たが・・・と。クッキー1枚ジョグ5分、プリ
ンなら15分と食べるか走るかを選んだとある。彼女は食べること大好き、だけど目標に向
かってやるべきことをすべてやりきる。精神力の強さに感嘆した。

減量でショックを受けたのはボクシング漫画「あしたのジョー」。圧倒的に階級差が
ある力石徹がジョーと対決したいがために檻に入り鍵をかけ水道栓を縛って水抜きまでした、
あの過酷な場面。フイクションとはいえ、その過酷さ、美学に痺れた。

生身のボクサーでは、女子プロ草分けの頃の猪崎かずみ。172cmの長身にしてフライ
級王者。

初めて観たのは六本木のデイスコ「ヴェルフアーレ」で行われた山木ジム主催の試合
だった。

この時猪崎は30代後半、王者ではなかった。長いリーチに褐色の肌、美しかったし
強かった。その後王者となり、初防衛戦。骨の上に皮を被った40代になっていた猪崎の姿
を見て言葉を失った。生ける力石、震えた。この試合で彼女は相手選手の顎を砕いたのだか
ら、恐るべし。

大森ジムが銀河ジムであったころ、とりわけ練習熱心な太目の女子練習生がいた。3
年で15キロ絞り、デビュー戦はバンタムで初勝利。その後、東京都選手権にライトフライで
出場、東京都チャンピオンに輝いた。全日本選手権は2か月後、札幌。お正月を挟んだこの
2ヶ月は魔の時間となり、彼女は試合後増えた体重を戻せなかった。結果、棄権となりボクシン
グからも離れていった。勝てる確率も?かったし、何より「乗り越える体験」の機会を失した
のは残念なことであった。

「食は私の命そのもの」考えさせられる名言だと、食欲の秋に思う。